ヘルスケア×電通グループ
第1回 村上 容×林 剛

#CX #DX #ヘルスケア #ヘルスリテラシー #電通 #電通メディカル 

メディカル領域を軸とする電通メディカルコミュニケーションズから、電通グループにおけるヘルスケア領域への取り組みを「ヒト」を通してご紹介します。


 (株)電通 第8ビジネスプロデュース局 村上 容さん、(株)電通メディカルコミュニケーションズ代表取締役 林 剛に、ヘルスケア領域に関する取り組みと今後の展望についておうかがいしました。


これまでの業務やヘルスケア領域での取り組みついて教えてください。

村上:20年以上前になりますが、私の電通での勤務は岡山でスタートしました。その後、関西支社を経て、現在、東京本社で勤務しています。地方支社で担当していた企業の事業規模は大小さまざまであり、マスメディアを対象としたabove the lineやクリエーティブの制作だけでなく、販促施策を中心としたbelow the lineや新規開拓など、幅広い対応を行っていました。「これ以上、打つ手はないのではないか?」という状況でも、あきらめずに別の視点からアプローチする習慣ができたのは、地方で培った幅広い対応の経験があったからかもしれません。

:私の勤務も静岡支社からスタートしており、同様に感じています。やはり、東京本社での仕事とは異なり、地方支社ではクライアントを360度の視点で見る姿勢で取り組まないと勝負になりませんでした。

村上:私もそう思います。地方支社では、常にコンサルティング的な視点で対応していかないとうまくいかなかったと思います。

:時代も流れ、電通も営業局からビジネスプロデュース局へと組織が変わりましたが、自分自身の視点を持ち、領域を制限せずに拡張することがビジネスプロデュースの入り口だとすると、私も村上さんも仕事を始めた最初の段階からその視点を持って取り組めていたのではないかと思います。村上さんは、これまでにどのようなヘルスケア領域のクライアントを担当されていましたか?

村上:ヘルスケア領域では、現在、日本赤十字社で広報を担当しています。日本赤十字社は、利益を求めない奉仕的救護組織で、毎年一定の寄付をご提供くださる方々や、さまざまな活動を展開するボランティアによって支えられています。最近の調査では、「日本赤十字社は病院で収益を上げているのに、なぜ寄付を求めるのか」と考える若者が多いという結果が出ています。私も担当前は、日本赤十字社が寄付で成り立っている組織であるということを知りませんでしたし、ほかにも知らない人が多いのではないかと思います。

また、コロナ禍となり、献血に協力してくれる人が減っている点も問題となっています。人工血液に関する研究も進んでいますが、実用化には至っていないため、現在でも多くの人の献血への協力が必要となっています。日本赤十字社を担当するようになってから、私自身もそういった問題に関心が向くようになりました。

そのほか、医療機器メーカーであるニプロ株式会社(以下、「ニプロ」)も担当していました。ニプロとは、20年以上にわたり電通がプロモーションのお手伝いをさせていただいていますが、ニプロとの業務を開始させていただいたのは私が初めてでした。初提案の際は、below the lineなど多くの提案を行い、タイムCMを2本提供させていただくことになりました。

:新しいクライアントに対して風穴を開けるのは大変な仕事ですよね。

村上:ニプロのコミュニケーションも、私たちが作らせていただきました。CM音楽は、20年以上前に先輩クリエーターが即興でつくった曲で、今でもテレビCMなどで使われています。テレビからこの曲が流れるたびに当時を思い出し、うれしく感じています。現在は、新型コロナウイルス感染症に立ち向かう医療従事者の皆さまへ感謝とエールを送る「エール篇」、新型コロナウイルス感染症対策に有効なオンライン診療システムをご案内する「ハートライン篇」、世界中に医療機器をお届けしているニプロのグローバル展開をテーマにした「世界のおまじない篇」というCMが展開されています。CMが始まった当時から、医療従事者を応援するという基本的なコンセプトは変わっていません。

:私たちの仕事は、キャンペーン終了とともに終わってしまうことも多いですが、この仕事は後世に残る仕事となりましたね。村上さんは、長くクライアントと向かい合う際に、どのようなことを大切にしていますか?

村上:やはり相手を深く知ることを大切にしています。それに加えて、直接の担当者だけでなく、その業界の仕組みを深く理解することも重要だと思います。業種が50あれば50通りの取引形態や「お作法」があり、それは実際に業務に携わらないとわかりません。例えば、メディカル領域では、外部から収集できる情報が限られていたり、学術的な知識がないと理解できない内容も多かったりしますから、どうしても専門的な知識が必要となってきます。

今後、ヘルスケア領域に取り組む上での電通グループの課題とは

村上:今後、デジタル技術を活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)や、収集したデータを活用したカスタマーエクスペリエンス(CX)などがさらに進化していくと思います。これまでDX、CXにはさまざまな規制やハードルがあり、実務的に有機的な展開が難しかったように思います。しかしコロナ禍となり、人と人との直接的なつながりが難しくなったことで、新たな仕組みが一気に進むようになるのではないでしょうか。現在、私は製薬企業とLINEを活用したコミュニケーションツールを運営していますが、今後、さらに新たなコミュニケーションのプラットフォームなどを作り出し、「ヘルスケアのことは電通に聞けばわかる」というような仕組みを作っていきたいと思っています。

:コロナ禍という話がありましたが、新型コロナウイルス感染症の流行を受けて視点の変化などはありましたか?

村上:もともと、私の家系は江戸時代から医師をしており、身近にヘルスケア情報に触れる機会が多かったので、ヘルスリテラシーを習得するにはよい環境にいたのではないかと思います。しかし、新型コロナウイルス感染症が流行したことで、よりいっそうヘルスケア情報に触れる機会が多くなったと感じています。最近、気になって調べた情報ですが、日本はヘルスリテラシーに関する知識が低いという報告がありました。日本は、かかりつけ医を持たない人も多く、プライマリケアを行う医師や施設が不十分だったりと、正しいヘルスケア情報を入手する場所が少ないことも原因ではないかと思います。これからは、多くの人のために、「正しく適切な情報が収集できる場所」を提供する必要があると思います。時間はかかるかもしれませんが、ヘルスケア情報を的確に収集できる場所を電通グループで構築していければ、と考えています。

:日本には、ヘルスケアリテラシーに関する学術団体として、日本ヘルスリテラシー学会、日本ヘルスコミュニケーション学会、日本メディカルコミュニケーション学会などがあります。私自身は日本ヘルスリテラシー学会の会員ですが、学会の先生方の間でも日本人のヘルスリテラシーの低さが課題として挙がっていると聞いています。日常診療において、時間に追われる医師が一人の患者さんにかける診療時間は短く、「3分診療」ともいわれています。こうした状況においては、医師が患者さんとの新たなコミュニケーションを構築するのはなかなか難しいというのが実情のようです。しかし、これからは医師も患者さんとのよりよいコミュニケーション構築のために、「伝えるための知識」を患者さんの視点で学ぶ必要もあるのではないでしょうか。私たちのこれからのビジネスにおいても、クライアントを見据えた視点だけでなく、患者さんの視点に立ったコミュニケーションを考慮して展開していかなければならないと感じています。その際に必要なのは、難しい情報を容易に理解できるようにするための翻訳作業だと思います。

村上:ヘルスケア領域で、コミュニケーションのプラットフォームを作るための課題は多いと思います。しかし、例えばDXを通して、今できるところから始めていくことで、これからの人生100年時代にも役立つ取り組みにつながるのではないかと期待しています。そしてこのような取り組みは、国をあげて行うものになっていくと思います。

:電通でも、過去に大学などの研究機関と地域データを収集し、解析を行っていたことがありました。パブリックヘルスに関する取り組みは、ロングスパンで考えていく必要があります。電通グループは、これまで比較的短いスパンでの事業に取り組むことが多かったため、このようなロングスパンの業務にどのように取り組むかは課題の一つとなるのではないかと思います。


編集後記
村上さんとのお話しから、クライアントを深く知り、「この人たちと仕事をしたい」と思っていただけるよう、努力することが大切であると改めて感じました。今後は、患者視点の取り組みや、ヘルスリテラシー向上への貢献など、これからの人生100年時代に向けた取り組みを目指していきたいと思います。

ありがとうございました。
(電通メディカル通信編集部)

※:ヘルスリテラシー 健康に関する情報を探し出し、理解し、活用する能力のこと

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