[ヘルスコミュニケーションウィーク2021~広島~]
明日をひらくヘルスコミュニケーション
-コロナ禍の今 見つめ直すー

#ヘルスコミュニケーション #ヘルスリテラシー #メディカルコミュニケーション 

2021年10月2日(土)・3日(日)、第13回日本ヘルスコミュニケーション学会学術集会が、「ヘルスコミュニケーションウィーク2021~広島~」という大会名で、第1回日本ヘルスリテラシー学会学術集会と第1回日本メディカルコミュニケーション学会学術集会との同時開催で行われた
日本ヘルスリテラシー学会は2019年に設立されたばかりだが、ヘルスリテラシーはヘルスコミュニケーションと表裏一体の関係にあるため、現在は日本ヘルスコミュニケーション学会の分科会として運営されている。また、同じく近年発足したばかりの日本メディカルコミュニケーション学会も、ヘルスコミュニケーションの中で重要な役割を果たす医学・医療専門家相互のコミュニケーションの学会として、日本ヘルスコミュニケーション学会の関連学会と位置付けられている。
ここでは本大会の中から、日本ヘルスコミュニケーション学会のシンポジウム1『「コミュニケーション」と「情報の関係を問い直す」~「リテラシー」は両者を繋ぐか~』を抜粋して紹介する。


「コミュニケーション」と「情報」の、

「近くて遠い、遠くて近い」関係

冒頭、座長の京都大学 健康情報学 中山健夫氏より、本シンポジウムの企画の意図が紹介された。「コミュニケーション」と「情報」は、「近くて遠い、遠くて近い」関係にあり、「リテラシー」とは、この二つの間の架け橋になるという視点である。

続いて最初のシンポジスト、東京大学大学院 公共健康医学専攻 医療コミュニケーション学分野 木内貴弘氏より、「情報からコミュニケーションへ-リテラシーの役割」という演題の講演が行われた。木内氏は、第1回日本ヘルスリテラシー学会学術集会の大会長でもあり、ここでは木内氏が考えるヘルスリテラシーの概念が紹介された。もともとリテラシーとは、「読み書きする単純な能力」を指していた。しかし現代においては、単に理解するだけではなく、それを整理、活用するまでがリテラシーであると考えられている。また、医療情報の中での「データと情報の違い」についても紹介された。データとは現実を数値や文字で表すもので、情報とはそのデータに価値や意味を見いだすものである。これを現代のリテラシーにあてはめると、「現実を表すデータから情報を作り、その情報を行動に変えること」となる。これらをもとに、健康・医療の分野におけるリテラシーを定義すると、医学研究者におけるヘルスリテラシーとは「現実やデータを価値のある情報に変えること」。そして医療者のヘルスリテラシーは、「その情報を双方向のコミュニケーションに変えること」。さらに患者や市民のヘルスリテラシーは、「コミュニケーションを行動に変えること」となる。最後に、患者や市民という受け手側に対し、病気を治したり健康を維持するための行動に結びつくコミュニケーションを提供すること、すなわちヘルスコミュニケーションは、疫学・臨床と同じくらい重要である、と結んだ。

次に聖路加国際大学 看護情報学分野 中山和弘氏が、「情報に基づく意思決定のためコミュニケーション」という演題の講演を行った。中山氏は「第1回日本メディカルコミュニケーション学会学術集会」の大会長として、患者の意思決定を支援するために、どのようなコミュニケーションが適しているのかを紹介した。患者自身が情報に基づく意思決定を行うことをゴールとして考えると、その情報をわかりやすくするためのコミュニケーションが重要となる。ただし、コミュニケーションの前提(共通言語、データを情報に変える知識、社会的なルール、コミュニケーションの目的など)によっては、コミュニケーションが成り立たない場合もある。講演の中では、患者と医療者がエビデンスを共有して一緒に治療方針を決める「Shared Decision Making(SDM)」の測定と評価に関する研究についても紹介された。患者用の共有意思決定質問紙・SDM-Q-9を使用した研究では、SDMで意思決定を行うと患者は治療に満足しやすいが、SDMが伴わなければ患者は治療方針を納得しにくく、医師からの説明にも満足しづらいという結果が得られたという。講演のまとめとして、「ヘルスコミュニケーションとは情報に基づく意思決定のためのもの」であり、「ヘルスリテラシーが不足しているため、まず情報の評価と、その情報による意思決定のプロセスを明確にすること」、そして意思決定の支援のためには「ティーチバック(医師が行った説明を、患者自身の言葉で説明しなおしてもらう)やSDMといったコミュニケーションの方法を使うこと」が現在の主流であると述べ、情報に基づく意思決定のスキルとなるヘルスリテラシーを身に付けるためには、意思決定のプロセスをたどる経験(情報をもらって、考えて、選んでいくこと)が必要で、そのプロセスを踏むことで、自身の気づきや確認ができ、それが自分らしさ、自分の幸せに繋がると結ばれた。

本シンポジウムの最後は、東京慈恵会医科大学 須賀万智氏による「コミュニケーション前提としてのヘルスリテラシー~パブリックヘルスコミュニケーションの観点から」という演題で、パブリックヘルスコミュニケーションについての講演が行われた。パブリックヘルスコミュニケーションは、まだ確立された定義が存在しないが、多数を相手にしたコミュニケーションであり、一般の人の行動変容、態度変更を促すコミュニケーション手法と考えられている。ヘルスコミュニケーションで多くの場合にありがちなのは、送り手側と受け手側それぞれのコミュニケーション前提(知識、スキル、地位、規範など)が、一致しないことである。そのために、両者の間で情報がうまく伝わらなかったり、間違って伝わるといったことが生じる。コミュニケーションを成立させるためには、相手のコミュニケーション前提を知ることが重要で、教育などにより、その差や不完全さを埋めていくことが大切である。そういった、健康の維持・向上のために情報を入手し、それを理解して活用する社会的スキルが、「ヘルスリテラシー」である。講演の中では、ヘルスリテラシーが情報入手と健康状態に関わることを示した研究や、健康メッセージの説得力を評価する尺度(HLS-14)についても紹介された。最後に、情報は発信する側にも多くの課題があるため、メッセージや伝え方をどう工夫すればいいかを推奨できるガイドラインを作っていければ、と今後の抱負を語った。

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