[学会レポート]
第66回 日本リウマチ学会総会・学術集会

#COVID-19 #パンデミック #リウマチ性疾患 #日本リウマチ学会 

2022年4月25、26、27日の3日間にわたり第66回日本リウマチ学会総会・学術集会が開催された。日本リウマチ学会は60年の歴史を誇る学術団体で、リウマチ性疾患の研究および診療内容の向上を推進することを目的に活動している学会である。

今学術集会のタイトルは、「We Shall Overcome」とされた。これは、「前に進むために、我々はパンデミックを克服しなければいけない。分断を克服しなければいけない。そして疾患を克服するための努力を止めてはいけない。」という願いが込められたものである。

今回の日本リウマチ学会総会・学術集会では、COVID-19のパンデミックの経験から得られた知見の共有や考察をテーマにしたシンポジウムも複数開催された。ここでは、そのうちの1つ「シンポジウム14:リウマチ性疾患とCOVID-19」を抜粋して紹介する。


リウマチ性疾患とCOVID-19

本シンポジウムは座長に堀内孝彦氏(九州大学病院別府病院 免疫・血液・代謝内科)及び金子祐子氏(慶應義塾大学 リウマチ・膠原病内科)を迎え、COVID-19の疫学、病態、治療、ワクチン効果と副反応、今後の展望の5つのトピックスについて、リウマチ性疾患診療の観点から最新の知見をそれぞれ5名のエキスパートにより解説された。

新型コロナウイルス感染症との対峙

~新しい治療法・ワクチンを中心に~

COVID-19の疫学について、舘田一博氏(東邦大学医学部 微生物・感染症学講座)より解説された。2019年中国武漢市で原因不明の肺炎が流行し、その原因が新型コロナウイルス(COVID-19)であることが報告され、世界的流行がもたらされた。本講演では、本ウイルスの感染経路が咽頭・鼻腔だけでなく唾液腺にもあることに加え、血管内皮細胞などを介して全身臓器に感染するという特徴や、重症例でしばしば報告される凝固異常や血栓形成のメカニズムについても言及され、新型コロナウイルス感染症の治療と予防を中心に最新の知見を解説された。

SARS-CoV-2に対する液性免疫応答と治療用抗体作製

COVID-19の病態と治療について、竹下勝氏(慶應義塾大学医学部 リウマチ・膠原病内科)より解説された。慶應義塾大学では、日本でCOVID-19の感染者が急増した2020年4月より大学病院の臨床医と医学部の基礎研究者の技術を結集し、COVID-19を克服するための「慶應Donner project」が開始された。今回は、本プロジェクトにおいて実用化研究が進められているSARS-CoV-2の中和抗体検出キットの開発及び治療用のCOVID-19中和抗体の開発という2つの研究について紹介された。慶應義塾大学リウマチ・膠原病内科においては、普段より自己免疫疾患患者の病変組織の抗体産生細胞から抗体を作製し、その反応性を詳細に解析する研究を実施しており、今回紹介されたいずれの研究もこの技術を応用したものである。

COVID-19に対する治療(抗ウイルス、抗炎症)

臨床におけるCOVID-19に対する治療について、緒方篤氏(大阪はびきの医療センター)より解説された。COVID-19の治療はウイルスが増殖し肺炎に至るまでのStage1(軽症:ウイルスによる肺炎が主体)、Stage2(中等症:全身の過剰炎症が主体)、Stage3(重症)の状態によって治療法が異なる。Stage1、2ではウイルスの増加や広がりを防ぐため抗ウイルス薬や抗体療法が中心となり、Stage2で酸素投与が必要な場合では抗炎症薬を追加しStage3に進展しないよう治療を行う。Stage3では過剰免疫を抑制する抗炎症治療や全身管理が主体の治療を行う。本講演では、臨床において使用可能な抗ウイルス薬や抗体医薬品、抗炎症薬の有効な使用法について概説され、本感染症治療の基本の考え方は、ウイルス量が少なく軽症な時に抗ウイルス薬でウイルス産生を可能な限り抑制し、抑制しきれなかったウイルスを抗体治療で除去し、抗炎症治療で重症化を予防することであると締めくくられた。

リウマチ性疾患患者におけるSARS-CoV-2ワクチン

リウマチ性疾患患者におけるCOVID-19のワクチンについて、木本泰孝氏(九州大学病院別府病院 免疫・血液・代謝内科)より解説された。リウマチ性疾患患者におけるCOVID-19発症リスクは健常者の1.5倍高いとの報告もあり、病勢の安定しているリウマチ性患者には新型コロナワクチン接種は強く推奨される。本講演では、リウマチ性疾患の治療薬により新型コロナワクチンにより誘導される抗スパイク蛋白抗体価の差異があることから、ワクチン接種前後の免疫抑制療法の一時中止の検討についても言及された。ワクチン抗体価の経時的な減少はすでに指摘されているところであるが、リウマチ性疾患患者においても3回目の追加接種が推奨されるとされた。

リウマチ性疾患者と感染症:COVID-19から学んだこと

リウマチ性疾患におけるCOVID-19感染症の今後の展望について、奥健志氏(北里大学医学部 膠原病・感染内科学)により解説された。リウマチ性疾患において、病勢コントロールが不十分な状態はサイトカインストームなどの免疫機構の異常などによる易感染性(感染しやすい)の状態にあるとの報告は以前からされていた。COVID-19においても免疫機構の異常と感染症の発症及び重症化との関連が判明し、リウマチ性疾患における病態理解や治療薬がCOVID-19の治療に寄与した。本講演では、日本リウマチ学会で実施したCOVID-19に罹患したリウマチ性疾患患者に関するレジストリ研究のデータを中心に、COVID-19がリウマチ性疾患の臨床に与えた影響について概説された。

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